国際世論調査で際立つ、日本らしさ。


毎年恒例となっているGallup International Association(ギャラップ・インターナショナル・アソシエーション)のEnd of Year Survey 2015の結果が、大晦日に発表されました。ギャラップ・インターナショナルは、世界各地で世論調査や市場調査を行う国際調査機関です。

現在公表されている調査結果では、次の3つの問いに対する世界68か国の国別の集計等が閲覧できます。(日本語訳は筆者による。)

・ あなたにとって、2016年は2015年と比べてどうなると思うか?
(良くなる/悪くなる/変わらない/不明)
・ 経済について、2016年は2015年と比べてどうなると思うか?
(良くなる/悪くなる/変わらない/不明)
・ 自分は幸せだと感じているか?
(超幸せ/幸せ/どちらでもない/不幸/超不幸/不明)
(但し、「不明」には、「分からない」と「回答せず」が含まれる。)

「良くなる」と「悪くなる」(「幸せ」と「不幸」)の差分をとった指標によるランキングでは、「今年の見通し」については、バングラディシュ、中国、ナイジェリアの3か国が「自分」と「経済」のいずれもベスト3入りする等、経済成長率の高い国が上位に目立つ一方、「幸福度」については中南米がベスト10の半数を占めます。

我らが日本はどうかと言えば、上から順に34位、32位、28位といずれも中位で、一見、面白くも何ともない結果に見えます。ですが、実は日本は、他の多くの国とは異なる際立った特徴を有しているのです。

■「差分」で見ると分からない日本の特徴
次の2つの図は、「今年の見通し」についてどう考えるかについて、横軸を「良くなる」、縦軸を「悪くなる」と回答した比率を国別にプロットしたものです。


図は、原点から遠ければ遠いほど、「良くなる」又は「悪くなる」というハッキリした方向性を持った回答が多く、原点に近いほど、そうしたハッキリした回答が少ないことを意味しています。

中には、ハッキリした考えに基づいて「今年は変わらない年」と回答した人もいるでしょう。しかし、そうではない人の割合は、「良くなる」又は「悪くなる」と答えた人に比べ、断然多いはずです。

日本がハッキリした回答をする人が著しく少ない国だというのは、こうした国際調査業務に携わる人たちの間では、もはや常識と言って良いかもしれません。

また、特に自分の「考え」が問われた場合に、こうした傾向が強く出ている印象があります。

■意外に「カンジ」は得意
「幸福度」についても、同じように見てみましょう。

「自分自身の人生をどう感じているか」との問いへの日本人の回答は、「今年の見通し」と比べてハッキリした回答の割合が比較的大きく、より全体の平均に近いことが分かります。

「幸せ」と「不幸」の選択肢がそれぞれ二段階に分かれていた影響もあるとは思いますが、そもそも日本人には、「どう考えるか」よりも、「どう感じるか」を問われた方が答えやすいのでしょう。

「感じること」と「考えること」はどちらも大事なことですが、より前者に傾いている人が、教育水準が高くクレバーなはずの日本人には、何故か案外多いように思います。

■「決められない度」でトップの日本
日本人がハッキリした判断を嫌いがちであるということを、End of Year Survey 2015の結果を用い、国際ランキングの形で示したものが下表です。単純に「わからない/回答せず」の割合を元に順位づけしたものが、表の「不明/回答せず」で、ここでは「わからない度」と呼ぶことにします。

「今年の見通し」の「わからない度」では、「自分」と「経済」のいずれもアゼルバイジャンに1位を譲りましたが、「幸福度」の「わからない度」では堂々の1位です。

「幸福度」については、「どちらでもない」と答えた人は比較的少なかったものの、「わからない」等とした人が他国に比べて多かったことになります。

また、「決められない度」は、下式のように計算しました。

「決められない度」 = 1 - (「良くなる」+「悪くなる」)
または、1 - (「幸せ」+「不幸」)

こちらは、「今年の見通し」で1位、「幸福度」では8位です。

どちらもダントツの1位ではありませんが、「わからない度」と「決められない度」の総合1位の座は、ほぼ確実と言って良いでしょう。

■決められないのは何故か
東芝の不正会計が当たり前のように長年続けられていたように、「空気読め」的な同調圧力が強い日本企業では、常に周りに配慮しながら、「誰かの意思」とはハッキリとはしないままに「組織の意思」が醸成されることは少なくありません。皆で判子を押して、結局誰がどう判断したか分からないような稟議書等のフォーマルから、組織間の根回しのようなインフォーマルまで、様々な仕組みを通して、互いに空気を読み合っているのです。

そうした環境に慣れてしまい、本当は自分の中に見出すべき答えをも周りの空気に求めるようになると、そうできないシチュエーションでは、答えを見つけることが難しくなるのかもしれません。

空気を読んで協調を模索することは、企業に限らず、学校や地域、友人関係等、日本のいたる所で見られる、とても日本的な作法と言えます。

そして、恐らくそれが最も強調されているのが学校です。そこでは、協調性のない子供は嫌われ、いずれ矯正されます。皆と違った意見を言って嫌われないようにと過度に気にすることで、自分の意見を言わずに済ませる癖がついてしまう子供も少なくはないでしょう。

実際、国別・属性別の調査結果を見ると、各設問ともに学生の「わからない度」は他属性と比べ断然高く、「自分の今年の見通し」、「経済の今年の見通し」、「幸福度」について全体の平均と学生を比較すると、それぞれ1.7倍(41%)、1.9倍(49%)、2.6倍(26%)も、「わからない度」が高いのです。(カッコ内は学生の回答率。)

どこから手を付けて良いのか分からないような根の深い問題ですが、その太い根っこの一端が日本の「教育」にあることは、間違いないと思っています。

≪参考記事≫
■日本がギリシャより労働生産性が低いのは、当たり前。
■軽減税率で一番損なのは誰か、分かりやすく解説してみました。
■スター・ウォーズを特別料金にするのはともかく、日本がそもそもダントツに映画が高い件。
■借金返済のために風俗店で働く女子学生の問題が、本当は奨学金のせいではない明らかな理由。
■【日米比較】お金持ちは本当にケチなのか?