日米の融資型クラウドファンディングは、似て非なるもの。日本のほうが圧倒的にイケてない件について。


週末にこんな記事を見つけました。

インターネットでお金の貸し手と借り手を結ぶ融資型のクラウドファンディングが伸びている。2014年末時点の累計融資額は310億円と、1年前の約2倍になった。国内ベンチャーキャピタルの大型ファンドに相当する規模だ。数万円からお金を出せるため、銀行の融資を受けにくいベンチャー企業などが活用している。金融庁は対価として株式を受け取る株式型も5月に解禁する。(日本経済新聞3月29日付朝刊『ネットで小口融資、1年で倍増』より抜粋。)

融資型のクラウドファンディング、日本で一般にソーシャルレンディングと呼ばれている投資商品の融資額がこの一年で倍増したというニュースです。

■ソーシャルレンディングとはどんなものか
日本でもクラウドファンディングという言葉がかなり浸透してきていますが、日本で通常クラウドファンディングと呼ばれているのは、クラウドファンディング四分類(寄付型、購買型、融資型、株式型)のうち、寄付型と購買型の二つ。何らかのプロジェクトを実現するための資金募集や、集めた資金で作成されるものを受け取る契約になっているものなどです。

これに対し、企業や個人の資金ニーズを満たすための融資による資金調達をクラウドファンディングの枠組みで行うのが、融資型クラウドファンディング、あるいはソーシャルレンディングと呼ばれるものです。欧米ではP2Pレンディング(Peer-to-peerレンディング)という呼称が一般的です。

日本のソーシャルレンディングの場合、基本的に借り手は事業者で、不動産購入資金や事業資金等のうち、担保掛目やスケジュール等の問題から銀行融資でまかない切れない部分が、ソーシャルレンディングによって調達されているようです。

投資の枠組みとしては匿名組合出資の形になっていて、投資家が組合に出資した出資金を元に、組合の営業者が事業者に資金を貸し出し、その元利返済金から営業者の利益や必要経費等を差し引いた金額が分配されます。匿名組合なので、分配金のうち利益となる部分は源泉徴収の対象となります。

リスクマネーですので、目標利回りは当然高く、国内への融資であれば4%~7%程度、海外へのマイクロクレジットでは10%超で募集されているようですが、目標利回りが高いということは、貸出先が返済不能となるリスクや、担保回収でカバーされないリスク、ソーシャルレンディング事業者又はその関連会社に信用事由が生じるリスク等が、相応に高いということです。

リターンとリスクがバランスを取るというのは、投資商品の基本中の基本です。どんな投資話にも必ず落とし穴がありますが、リターンが低い投資の落とし穴は通常小さく、リターンが高い投資の落とし穴は大きいのです。

■日本のソーシャルレンディングに欠ける新規性
上述のとおり、日本のソーシャルレンディングは、匿名組合方式のファンドに出資して、そのファンドが事業者に貸し出す、または事業者に貸し出す貸金業者に貸し出すという仕組みをとっています。この仕組みは普通の私募ファンドと同じで、ネットで募集して比較的少ない金額から投資できる以外は、特に目新しい点はありません。

先ほど、欧米ではPeer-to-peerレンディングという呼称が一般的だと書きましたが、慣例の問題だけではなく、同じ融資型クラウドファンディングとは言っても、日本ではそう呼ぶことができない理由があります。

Peer-to-peerには、借り手と貸し手を直接結ぶという意味合いがあるのですが、じつは日本のファンド型ソーシャルレンディングは、基本的に投資家が自ら借り手を選んで投資する仕組みがありません。これに対し、欧米のP2Pレンディング・プラットフォームでは、投資家が自ら直接、自分が資金を貸し出す相手と金額を指定する仕組みを実現しているのです。

例えば、融資型クラウドファンディング世界最大手でニューヨーク証券取引所への上場も果たしているLendingClub社(以下、LC社)の場合は、投資家が選んだ借入希望者に対して銀行が貸し出した個別の消費者ローンをLC社が買い取った上で、ローンの返済金と同額(但し、回収業務の費用を差し引き後)のキャッシュフローを受け取ることのできる社債をLC社が発行し、投資家がそれを購入するという形(注1)で、Peer-to-peerを実現しています。これは新しい仕組みです。

「既存の私募ファンドの枠組みをまったく超えずに募集だけネットでやりました」という日本の融資型クラウドファンディングは、欧米の融資型クラウドファンディングとはまったくの別物として理解する必要があるでしょう。

■日本のソーシャルレンディングの最もイケていない点
日本のソーシャルレンディングの一番の問題は、投資のリスクがどの程度あるのかという点がさっぱり分からないものが非常に多いという点です。米国P2Pレンディングの基準で考えた場合、ほとんどがそうだと言っても言い過ぎではないかもしれません。

先ほどのLC社の場合、借入希望者の過去の借入履歴等の信用情報や年収、職業、個人の信用度を示すFICOスコア、LC社の信用モデルによる格付等、多くの情報が投資家に開示されるだけでなく、過去の全債務者についての同様の情報のほか、全債務者のすべての返済履歴についても開示しています。

そうした情報が開示されているからこそ、投資のリスクを定量的に理解することが可能となり、Peer-to-peerが成り立つのだとも言えます。

翻って、日本の場合は、投資対象の事業者の財務や事業についての情報、担保価値や担保余力等、回収可能性について合理的に判断する材料が十分でないケースがやけに目立ちます。いくら利回りが高くても、リスクが計れないのであれば、投資商品としては欠陥商品だと言わざるを得ません。

個人的には、融資型クラウドファンディングのような、オープンに募集されるリスク性の投資商品というのは選択肢の一つとしては面白いと思っていますので、リスクに関する情報開示を充実させるといった、市場を健全な形で発展させるためのたゆまぬ努力を、融資型クラウドファンディング業者の皆さんには期待したいと思います。

ぜひ以下の記事も読んでみてください。
■映画「イミテーション・ゲーム」の暗号解読ミッションを、「魚のムニエル」で解説してみました。
■不遇の天才チューリングの半生を描いた脚本家が感動のアカデミー賞スピーチで訴えた、日本に一番足りないもの。
■「100分中20分が性描写」と話題の女性向け官能恋愛作品がもたらした衝撃と、大人の事情。
■ちきりんvsイケダハヤト「通勤手当廃止」論争で語られなかった「住まいの問題」緩和策。
■借金返済のために風俗店で働く女子学生の問題が、本当は奨学金のせいではない明らかな理由。

■まとめ
・融資型クラウドファンディング市場が、日本でも拡大しつつあるようです。
・ソーシャルレンディングと呼ばれる日本の融資型クラウドファンディングは、これまでもあった私募ファンドをネットで小口で募集しているだけで、欧米等と比べ新規性に欠けます。
・欧米の融資型クラウドファンディングはP2Pレンディングと呼ばれ、貸し手と借り手を直接結び付けるものです。
・日本のソーシャルレンディングは、リスクに係る情報開示が不十分です。情報開示等を進め、市場が健全に拡大するよう、融資型クラウドファンディング業者は努力すべきです。

(注1)証券化と似ていますが、ローンはLC社のバランスシートに載ったままとなります。

映画「イミテーション・ゲーム」の暗号解読ミッションを、「魚のムニエル」で解説してみました。

写真はムニエルではなく、たい焼き風パイ包み焼き
映画「イミテーション・ゲーム」を観たときに、チューリングたちが日々取り組む暗号解読作業にピンとこない方は少なくないかもしれません。この場合、まずは暗号がどんなものなのかを大雑把に理解するのが良いでしょう。

■暗号とはどういうものか、何となく理解したい
暗号は、簡単に言えば、暗号アルゴリズム(計算式)と暗号鍵(設定/パラメータ)から成ります。暗号化前のメッセージである平文を、暗号アルゴリズムで加工するのですが、どんな感じで加工するかというのが暗号鍵になります。そして、加工してできたのが暗号文です。

料理で例えると、平文である魚に対し、包丁で捌いて切り身にして小麦粉振ってバターで焼いてムニエルにするというのがアルゴリズムです。このとき、包丁でどのくらいの大きさにどんな感じに捌いて、どのくらいの小麦粉とバターで焼くかという「設定」が暗号鍵になります。で、その結果できて、お皿に盛られたムニエルが暗号文だと考えてください。

この場合、どんな設定(暗号鍵)だったかを知らなければ、ムニエルから元の魚の姿形やサイズを知ることは不可能です。(便宜上、そういうことにしておいて下さい。)

そして、どんな設定(暗号鍵)だったかを知っていれば、ムニエルから元の魚を知ることができるのです。(便宜上…)

ここでは、暗号鍵は同時に復号鍵でもありますが、暗号鍵と復号鍵が異なる暗号もあります。

■暗号の解読は、何をやっているのか
当時世界で最も洗練されたドイツの暗号機「エニグマ」は、この例で言えば、「包丁で捌いて切り身にして小麦粉振ってバターで焼いてムニエルにする」アルゴリズム(仕組み)を実装した機械です。

そして、映画の中でチューリングたちが長い時間を費やしてやっていたのは、平文である魚の情報がまったくない状態で、既知の暗号文である「お皿に盛られたムニエル」から未知の平文である「元の魚の姿形や大きさ」を言い当てるために必要な情報、すなわち日々改訂される「包丁での捌き方や小麦粉やバターの分量」の設定(=暗号鍵)を、その日が終わるまでに解明する作業だったわけです。

このような暗号解読法を、「暗号文単独攻撃」と言います。

暗号文しか分からないので、それをどうにかこうにかこねくり回して、何とか暗号鍵を見つけようという発想です。

この暗号文単独攻撃を、最初はありうる候補の全てを試す「全数探索」から始め、そこから合理的なロジックで暗号鍵の候補を絞り込み、計算を効率化することで解読しようとするのですが、これは結局上手くいきません。

その後、チューリングたちがエニグマの解読に成功したときに用いた暗号解読法は、「既知平文攻撃」というものでした。

上の魚の例で言えば、、、

と、ここではこのくらいで止めておきましょう。ここから先は、ぜひ映画を観て確認して下さい。

暗号というものが何となく分かった上で映画を観ると、おそらく、知らないで観るより何割か増しで楽しめるのではないでしょうか。

以下の記事も、ぜひ読んでみてください。
■不遇の天才チューリングの半生を描いた脚本家が感動のアカデミー賞スピーチで訴えた、日本に一番足りないもの。
■「100分中20分が性描写」と話題の女性向け官能恋愛作品がもたらした衝撃と、大人の事情。
■有馬記念から考える「にっちもさっちもいかない状況」の克服方法
■ちきりんvsイケダハヤト「通勤手当廃止」論争で語られなかった「住まいの問題」緩和策。
■借金返済のために風俗店で働く女子学生の問題が、本当は奨学金のせいではない明らかな理由。

■まとめ
・暗号について、魚のムニエルを例に説明してみました。
・暗号文だけから暗号鍵を見つけるのは、天才チューリングにも困難だったようです。
・暗号について何となく知っておくと、もともと面白い映画を一層楽しめるかもしれません。

不遇の天才チューリングの半生を描いた脚本家が感動のアカデミー賞スピーチで訴えた、日本に一番足りないもの。


現在公開中の映画で鑑賞後の評価が最も高いのではと言われているのが、知る人ぞ知る超天才アラン・チューリングの半生を描いた『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』です。Yahoo!映画のユーザーレビューでは、3月25日現在、4.52の高評価となっています。

映画はドイツの暗号エニグマの解読に挑むシーンを中心に進行するのですが、原題のタイトルでもある「イミテーション・ゲーム」は暗号解読のことを言っているわけではなく、人工知能の父と呼ばれるチューリングが考案した、機械が人工知能と言えるかどうかを判定するチューリングテストを意味しています。この点を念頭に置きつつ、チューリングの言葉や感情の動きに気を配りながら映画を観ることで、この映画が本当に伝えたいことについて、少し深く考えることができるかもしれません。

私もとりあえずもう一度観てみようかなと思っています。遥か昔、学部時代に専門だった暗号学と回路に関係する話でもあり、一度目は素直に夢中になり過ぎました。

■感動を呼んだアカデミー賞受賞スピーチ
先日の第87回アカデミー賞で最も感動を呼んだのが、この映画で脚色賞を受賞した脚本家のグレアム・ムーア氏の受賞スピーチでした。

“心苦しいことです。アラン・チューリングがこのような舞台に立って、そして困ってしまうくらいに魅力的な皆さんを見渡すことは、決してありませんでした。私はしています。そしてこれは、私の知る限り最もアンフェアなことです。
つまり、このような機会を頂き私が言いたかったのは、このことなのです。16歳のとき、私は私自身を殺そうとしました。自分が変わっていると感じ、自分が他人と違っていると感じ、そして、自分はどこにも属さないと感じていたからです。そして、いま私はここに立っています。このひとときを、自分が変わっている、自分は他人と違う、自分にぴったり合う場所はどこにもないと感じている子供のために捧げたいと思います。あなたは(どこかには)ぴったり合っているのです。私が請け合います。ステイ・ウィアード、ステイ・ディファレント、そして、あなたの番になって、あなたがこの舞台に立つ時に、どうか同じメッセージを次に続く人に渡してください。ありがとうございました!”(注)

既にエンタメ系メディア等で紹介されている訳文は、こなれた日本語に置き換えているものばかりですが、ここでは敢えて、できる限り原文に忠実に、直訳に近い形で訳してみました。そうすることで、ムーアのメッセージをより正確に受け取ることができると思うのです。

「ステイ・ウィアード、ステイ・ディファレント」は、「(そのまま)奇天烈であれ、異質であれ」と言う意味ですが、もちろんこれは、スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学での名スピーチ「ステイ・ハングリー、ステイ・フーリッシュ」に掛けています。そうした理由も思い当ります。

じつは、本当のところは分からないのですが、アップル社のロゴであるかじったリンゴは、青酸カリ入りのリンゴを食べて自殺したとされているチューリングへのリスペクトを表しているとも言われているのです。アラン・チューリングは、コンピューターサイエンスの世界では史上最高の功労者とされているため、実際にジョブズにそうした意志があったとしてもおかしくはありません。

ムーアはおそらく、疎外感を感じている普通とどこか違う部分のある子供たちに、単に「そのままで良いんだよ」と言ってあげているのではないのだと思います。そこには、ジョブズが次代を担う若者に託したように、自分が本当に大切だと思っている価値観を後世に繋ぎたいという明確な意思があるのです。

ムーアは言っています。次はあなたがここに立ち、後継に繋げよと。そうなるために、相応の困難を乗り越えよと、暗に言っているのです。

チューリングがしたように。

自らがそれに続いたように。

■異質であること、それ自体に価値がある
ムーアが映画やスピーチを通して伝えたかった一番大事なことは、「他人と違っていても大丈夫だよ」みたいなありがちな柔らかいものではなく、「異質であること自体に価値がある」という強いメッセージなのだと、私は考えています。

誰もが異質であることを望まない状況は、順調なときはとても強固に見えるのですが、一旦それが破たんすると雪崩を打って崩れ去り、じつはとても脆弱だったということが分かります。

政府も軍もメディアも国民も、皆が何かに憑りつかれたかのように戦争に邁進した時代の日本を例にあげるまでもありません。「空気読め」的な同調圧力の強い日本では、経済や政治、社会、会社、学校、家庭等、あらゆるレベルで、他人と異なることを良しとしないが故の脆弱さが問題になっているように感じます。

例えば、経済では1990年代のバブル崩壊や2000年代の金融ショック等、いずれも皆が極端に同じ方向を向いていたことが、問題が拡大した大きな要因となりました。

政治では鳩山ショック、震災後の過剰な「自粛」が求められる空気、前例主義で無駄な手続きの多い社内決裁、個性を伸ばせない学校教育、皆が同じようなスーツを着て同じように疲弊する就活、子供たちを蝕むいじめ問題、、、本当にたくさんあるように思います。

異質な存在は、高層ビルの制振構造のように、全体が一方向に振れるのを抑える効果を持っています。

同調圧力の強い日本でこそ、「ステイ・ウィアード、ステイ・ディファレント」というムーアのメッセージを大事に考えるべきではないでしょうか。

以下の記事も是非参考にしてください。
■「100分中20分が性描写」と話題の女性向け官能恋愛作品がもたらした衝撃と、大人の事情。
■有馬記念から考える「にっちもさっちもいかない状況」の克服方法。
■話題沸騰「正社員制度をなくしたらどうなるか問題」を、ファイナンス論的に考えてみた。
■ちきりんvsイケダハヤト「通勤手当廃止」論争で語られなかった「住まいの問題」緩和策。
■借金返済のために風俗店で働く女子学生の問題が、本当は奨学金のせいではない明らかな理由。

■まとめ
・不遇の超天才アラン・チューリングの半生を描いた映画『イミテーション・ゲーム』が高評価を得ています。
・感動を呼んだ脚本家のアカデミー賞受賞スピーチは、大事な価値観を後継に繋ぐ素晴らしいメッセージです。
・「ステイ・ウィアード、ステイ・ディファレント」は、同調圧力の強い日本でこそ大事に考えるべきでしょう。

(注)スピーチ全文

“Here’s the thing. Alan Turing never got to stand on a stage like this and look out at all of these disconcertingly attractive faces. I do. And that’s the most unfair thing I’ve ever heard. So, in this brief time here, what I wanted to do was say this: When I was 16 years old, I tried to kill myself because I felt weird and I felt different, and I felt like I did not belong. And now I’m standing here, and so I would like this moment to be for this kid out there who feels like she’s weird or she’s different or she doesn’t fit in anywhere. Yes, you do. I promise you do. Stay weird, stay different, and then, when it’s your turn, and you are standing on this stage, please pass the same message to the next person who comes along. Thank you so much!”
(『“This unsuspecting Oscar winner gave the most inspiring speech of the night”, Business Insider, 2015/2/23』より抜粋。)

「すき家のゼンショーがベア2000円」に感じる空々しさの正体は、やはり雇用格差問題だった。


トヨタをはじめ自動車メーカー等の輸出産業を中心に、労使交渉の結果、高水準のベアで妥結する大手企業が続く中、あの「すき家」のゼンショーHDも何故か2000円のベアを発表しました。3期連続のベアだそうです。

ゼンショーホールディングス(HD)は16日、牛丼店「すき家」の運営会社などグループ11社の正社員(911人)を対象に定期昇給と月2000円のベースアップを実施すると発表した。ベアは3年連続。2015年4月入社の大卒者初任給も4千円高い20万5千円とする。人手不足を受けてすき家に深夜営業休止店が発生したことなどから、ゼンショーHDの15年3月期の連結最終損益は赤字の見通し。

(『ゼンショーは赤字でもベア』、日本経済新聞朝刊、3/16付)

17日に発表された業績予想の修正によれば、2015年3月期の連結営業利益は前期比67%減の26億円。いわゆる「鍋の乱」で深夜閉店していた店舗が半年で半減するなどしたことで、前回の赤字予想から上方修正されました。

営業黒字予想となったとは言え、最終損益は大きく赤字となる見込みの中で、2000円のベアというのは異例の決断と言えるでしょう。

■ベアは従業員の生活改善のため?
3月17日のキャリコネニュース記事『ゼンショー、業績厳しくても2000円のベースアップ 「従業員の生活を改善したいという経営側の強い思いある」』によれば、業績が厳しい中でのベア実施は従業員の生活改善のためと、同社広報が語っています。

昨年、「鍋の乱」が取りざたされた際にブラック企業と揶揄されていた同社が、業績から見て過ぎた水準のベアを実施するというので大きく注目されることになったわけですが、こうした「従業員のため」的な言い分を空々しく感じる人も少なくないのではないでしょうか。

上の記事でも、正社員はいいけどバイトはどうなんだ、といった巷の声が紹介されています。パートタイム職の離反が原因で問題になったことを考えると、これは当然の見方でしょう。

一部の正社員と、それ以外の社員を含めたその他の従業員との間で、格差が拡大しつつあるのが実態ではないか、というのが同社の決算資料等から類推されるのです。

グラフをご覧ください。2014年3月期までの有価証券報告書から、社員とパートタイムの平均賃金、社員の数、社員に対するパートタイムの倍率などの推移をまとめてみました。

パッと見てグラフから分かるのは、最大の経常利益を記録した2012年3月期を境に、パートタイム主体の拡大路線から、おそらくパートタイムの契約社員化によるパートタイム比率の縮小へと方針転換がなされている点や、社員の平均給与が明らかに減少し続けている点などでしょうか。

じつは、ゼンショーHDが発表したベアの対象となる911人の正社員というのは、社員全体の1/6程度でしかありません。それ以外の社員は、契約社員や傍流の関連会社正社員ということになります。

そして、おそらく本流の正社員の平均給与が550万円近辺と考えられる一方で、その他の社員の平均給与はその半額程度と見込まれるのです。

■バイトから続く、正社員への細く長い道のり
試しにすき家のバイト募集を見ると、バイトとして採用された新人「ニューフェース」から始まり、「クルー」、「キャプテン」、「チーフ」と、ここまでバイトの立場でキャリアアップしたら、その次が契約社員の「エース」。ようやく店長になれます。募集サイトによれば、最短では3か月とのこと。

その契約社員であるエースとして、店長の後に複数店舗担当もこなせば、ようやく正社員になる目が開けます。

この間、時給換算ではバイトとそれほど変わらない給与水準です。道は繋がっているとは言え、容易ならざるものがあります。

2013年3月期以降の社員平均給与の減少、社員の増加、パートタイム倍率の減少等を見ると、パートタイムから契約社員への転換はそれなりに進んでいるようですが、そのうち正社員まで辿りつける人は一体どのくらいいるのでしょうか。

■頑張っても報われない社会に、人は希望を持てない
結局のところ、大企業の経営陣と正社員労組が春先にゴニョゴニョやった結果「ベア何千円」とか言っているのは、既得権者同士が自分たちの都合の良いようにパイを分けているだけの話なのです。

不幸にも既得権から漏れた人に配慮しようという殊勝な考えは、そこには一切ありません。

労働問題に限らず一般論として、既得権やそれに伴う参入障壁は、個々の努力を否定する働きを持っています。そして、頑張っても報われないような社会では、多くの人は将来に希望を持てません。また、頑張ったことが報われると思っていない人は、当然のことながら、他人の努力についても評価しません。

ポスドクや中高年の学び直しなどが日本で評価されないのも、そうしたことが心因的な背景にあるような気がします。

以下の記事も、是非参考にしてください。
■すき家「バイトの乱」から学ぶ「ノー残業制度」の問題点。
■話題沸騰「正社員制度をなくしたらどうなるか問題」を、ファイナンス論的に考えてみた。
■ちきりんvsイケダハヤト「通勤手当廃止」論争で語られなかった「住まいの問題」緩和策。
■借金返済のために風俗店で働く女子学生の問題が、本当は奨学金のせいではない明らかな理由。
■全国で深刻化する空き家問題。東京都心で空き家が放置される理由とは?

■まとめ
・すき家のゼンショーHDが、最終損益赤字見込みにも関わらず、ベア2000円を発表しました。
・ベアの対象となるのは、全従業員の一部である正社員のみです。
・その他社員の平均給与は、対象正社員の概ね半分程度と類推されます。平均給与全体は逓減。
・バイトから契約社員への転換はおそらく少なくないものの、正社員へは長い道のりです。
・正社員優遇の雇用制度では、個々の努力は評価されにくいと思われます。

「馬券の税金」判決確定で、色めき立つのは詐欺師たち? 「必勝ソフト」詐欺に御用心。


本日、3月10日、競馬関係者と税務当局にとっての一大ニュースが発表されます。

先日報じられたように、5億7千万円を脱税したとして馬券の払戻しを申告しなかった会社員男性を大阪国税局が所得税法違反で告発した件で、今日、最高裁が判決を言い渡す予定となっているのです。

すでに高裁判決のまま確定するのが確実視されており、馬券購入であっても一定の条件を満たすことで、今後は一時所得ではなく雑所得として申告できるようになります。但し、「一定の条件」をどう決めるかについては不透明なままですので、当面はケースバイケースで税務当局と調整することになると思われます。

■市場には出回らない「必勝ソフト」
先日、判決が確定する見込みとなった直後に書いたエントリーでは、ホリエモンこと堀江氏のコメントに乗っかったカジノ専門家木曽氏のブログ記事にさらに乗っかる形で、競馬「必勝ソフト」が導入された世界について、簡単なシミュレーションを元に想像してみました。

必勝ソフトの存在を前提とした、いわば戯言のような記事だったわけですが、競馬市場の仕組みに興味がある人であれば、それなりに面白く読んでいただけたかなとは思います。

ところで、必勝ソフトなんて、実際にはあり得るのでしょうか?

必勝ソフトを文字通り必ず勝つソフトとすれば、そんなものはあり得ないでしょう。平均的に回収率がプラスになるソフトと定義するのであれば、それは実現可能かもしれません。

競馬市場というのは、売買手数料が20~25%程度差っ引かれるマーケットですので、平均でプラスになるのは並大抵のことではありませんが、馬券市場の偏差値で80オーバーとか、そのくらい優秀であれば、もしかしたら可能かもしれません。

ですが、仮にそういうものがあったとして、それは絶対に市場には出回らないでしょう。「本物」を他人に提供するメリットがまったくないからです。市場に出回るとすれば、偽物か、本物であればそれが陳腐化したときです。

■ギャンブル詐欺にご用心
ある意味、「儲かる馬券購入システム」が解禁されるとも言える今回の確定判決は、ギャンブル詐欺を生業にしている犯罪者たちにとって、必勝ソフト詐欺や必勝法詐欺の大チャンスとも言えるわけです。

ギャンブル詐欺は、振り込め詐欺や金融商品詐欺と同様に「特殊詐欺」に分類されていますが、それらと同様に高齢者の被害が多く報告されています。若年層も少なからずいるのですが、一番のボリュームゾーンは高齢者なのです。

しかも、ギャンブルと言えば男性のイメージが強く、実際、若年層では男性の被害が多いのですが、高齢者に限って言えば、女性の被害の方が多く報告されています。これも、他の特殊詐欺と似通った傾向と言えます。

高齢の方には特に気をつけていただきたいのですが、競馬ファンの方も、そうではない方も、世の中そんな美味しい話はないのだということを、改めて肝に銘じおきいただきたいと思います。

あなたの前にあらわれる「必勝ソフト」や「必勝法」の美味しい話は、ぜーんぶ詐欺ですから。

馬券と競馬等については、是非、以下の記事も参考にしてください。
■「馬券の税金」判決の影響は? ホリエモンとカジノ専門家のどちらが正しいか、JRA馬主の証券アナリストが解説します。
■ジャパンカップG1の時給は60億円!? 馬主という仕事の意外すぎる真実。
■有馬記念から考える「にっちもさっちもいかない状況」の克服方法。
■海外馬券の販売開始か?日本での馬券売上のインパクトとマネーロンダリングの可能性。
■借金返済のために風俗店で働く女子学生の問題が、本当は奨学金のせいではない明らかな理由。

■まとめ
・馬券を継続的に買う場合に外れ馬券も経費に算入できるとの判決が、今日、最高裁で確定します。
・雑所得と一時所得の明確な線引きのルールがないため、今後は当面ケースバイケースで税務当局と調整することになります。
・必勝ソフトは市場に出回らないため、美味しい話があれば間違いなく詐欺でしょう。(詐欺師にとってはビッグチャンス。)
・ギャンブル詐欺でも、高齢者(特に女性)の被害が多く報告されています。
・美味しい話はないのだということを、肝に銘じておきましょう。

全国で深刻化する空き家問題。東京都心(千代田区、中央区、港区)で空き家が放置される理由とは?


先月26日、「平成25年住宅・土地統計調査」の確報値が公表されました。5年ごとに公表されるこの調査は、日本の住宅と土地について、その居住や保有の現状と推移を様々な切り口から明らかにしています。また、その中から住宅数と空き家数にかかわるいくつかの項目を用いることで、空き家率が計算できます。

■意外に多い? 東京23区の空き家
首都圏の空き家率の推移については、BLOGOS等にも配信されている「マンション・チラシの定点観測」ブログの3月5日の記事「空き家率 1都3県の15年間の変化が分かる地図アニメ」が紹介しています。アニメーションで変化を視覚的に理解できるのは、分かりやすいし、面白いと思います。

記事をご覧になった方は、おそらく、「都心も意外に空き家があるんだなぁ」と、思われたのではないでしょうか?

実際、都心にはたくさん空き家があるのですが、その理由について考えるために、ここでは空室率について少し細かくブレークダウンしてみました。データ時点は2013年10月です。表中の「ボロ」は、元の統計表で「腐朽・破損あり」とされているものです。

こうして細かく見てみることで、いろいろ気づくことがあるものです。

例えば、
・東京の空き家率は、賃貸物件の空室率の影響が大きい。(23区は全体の52%が賃貸物件、全国では38%。)
・賃貸物件の空室率がかなり高い。特に豊島区、大田区、中野区等。
・千代田区、港区等、都心の空き家率は高いが、相対的には、特に賃貸以外について顕著な傾向。
・江東区はいずれの切り口でも空き家率が低い。
・足立区はボロ空き家は多いが、非ボロ空き家は少ない。
等々。

こうした気づきを片っ端から深掘りしてみるのも面白いかもしれませんが、ここでは特に都心三区(千代田、中央、港)の空き家率が、特に非賃貸で高い点に注目してみました。

■なぜ都心で空き家が放置されるのか?
表の右上、賃貸以外の物件の空き家率で上位となったのが、千代田区、中央区、港区の都心三区です。賃貸物件のランキングで中央区だけ空室率が低いように、切り口によっては必ずしも同じ傾向とはなりませんが、賃貸以外の物件に限って言えば、かなり似ています。

結論から言ってしまうと、都心三区で空き家が多いのは、これらの区では活発に不動産開発が行われているからなのです。

空き家が増えているというと過疎化が進むイメージを思い浮かべるのがたぶん普通なのですが、じつはそれとは真逆のことが起こっている場合もあるのです。

例えば、六本木ヒルズの開発では、元々500世帯ほどが住んでいた地区を地上げし、現在の形にするまでに、計画の公表から考えても約17年かかったと言われています。地上げは計画発表前から徐々に進められますし、途中でいったん頓挫して他の業者に引き継がれる場合等もあり、長い場合では数十年もの時間をかけて、その間徐々に、着工に至るまで空き家が増え続けます。

また、六本木ヒルズのような大規模開発ではなくとも、都心では至る所で様々な規模の不動産開発が進行中です。開発が進めば進むほど、一時的には空き家が増加するのです。

ただ、開発は何も都心三区のみで進行しているわけではありません。最も空き家率が低い江東区は、オリンピックに向けて大プロジェクトが目白押しですし、東急による駅周辺の大型開発が計画されている渋谷などもあります。では、なぜこれらの区ではそれほど空き家率が高くないのでしょうか?

これは、都心三区では、多くの一般地権者が関係する地区の開発プロジェクトが多いのに対し、江東区では都等が所有する埋め立て地、渋谷区では東急電鉄の鉄道跡地等、地上げの必要がほとんどないような地区が主な開発の対象となっているためでしょう。

グラフは、Googleトレンドで「区名+”開発”」による検索状況を調べた結果(2015/3/6取得)を、別途まとめたものです。(度数は相対的な値です。)

都心三区の開発への関心が相対的に高いのは、明らかでしょう。ただ、おそらくそれは、多くの人が待ちわびているから関心が高いというわけではなく、開発が自分自身に直接関係するという人が多くいるからなのだろうと思います。

■東京23区の空き家問題とは?
東京都区部では、地方で問題視される戸建ての老朽化した建物が放置されるケースも少なからずあるものの、重要な問題とまでは言えません。もともと割合は小さい上に、その多くは新たな開発に伴うものと考えられるからです。

では、東京都区部では空き家問題が重要ではないのかと言えば、そうではありません。東京には東京で、それとは別の問題があるのです。

東京で本当に問題視すべきなのは、賃貸物件の空室率の高さに象徴される、老朽化した集合住宅の空き家の問題です。老朽化した集合住宅が建て替えできず空室が増えることで、そうした集合住宅がスラム化することも考えられます。

集合住宅は、権利関係者が多いという特徴があります。古い物件の中には現在の建築基準では同じように建て替えできないものも少なくないこともあり、その中で権利関係者間で建て替えの合意に至るというのは、簡単なプロセスではないのです。

空き家が放置される問題では、東京には東京の事情、地方には地方の事情があります。地域特有の問題もいろいろあるでしょう。

空き家問題解決のために何らかの法改正等も期待されるところですが、現状を詳しく吟味することで、そうした様々な事情を汲みつつ、効果的な対策を考えていかなければなりません。

一人一人が当事者として、空き家問題について真剣に考えるべき時が来ているのではないでしょうか。

是非、以下の記事も参考にしてください。
■ちきりんvsイケダハヤト「通勤手当廃止」論争で語られなかった「住まいの問題」緩和策。
■新相続税制で注目が増す賃貸併用住宅、本当に怖いのは国税庁よりも空室率です。
■話題沸騰「正社員制度をなくしたらどうなるか問題」を、ファイナンス論的に考えてみた。
■一年で3回転職したアラフォー女子、年収倍増は幸運だけが理由じゃなかった。
■借金返済のために風俗店で働く女子学生の問題が、本当は奨学金のせいではない明らかな理由。

■まとめ
・最近公表された「平成25年住宅・土地統計調査」確報値で、各地の空き家率の上昇傾向が確認されています。
・東京23区は空き家率の高い賃貸物件の割合が高く、全体の空き家率を押し上げています。
・都心三区で賃貸以外の空き家率が高い理由は、大勢の権利関係者がいる不動産開発が多いためです。
・東京の空き家問題は、老朽化する集合住宅の建て替え問題と大きく係っています。
・東京には東京の、地方には地方の空き家問題があり、効果的な対策が必要です。

画期的な規制緩和となるか? イスラム社会での日本のプレゼンス拡大へ。


先月24日、金融庁が「主要行等向けの総合的な監督指針」及び「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の一部改正案を公表しました。

時事通信社の記事『イスラム金融、邦銀本体も=金融庁が監督指針改正へ』(2/24付)は、以下のように伝えています。

金融庁は24日、利子のやりとりを禁じたイスラム教の教義に基づく「イスラム金融」について、邦銀が本支店でも取り扱うことを認める監督指針の改正案を公表した。現在は海外現地法人で行えるが、海外支店でも提供できるようにし、邦銀がイスラム圏での融資を行いやすくする。

今回の監督指針改正案は、銀行が『顧客又はその関係者の宗教を考慮して、商品の売買、物件の賃貸借又は顧客の営む事業に係る権利の取得が含まれる資金の貸付けと同様の経済的効果を有する取引』を行う場合の適格要件を明確化するものです。記事にもあるように、邦銀が直接イスラム金融を扱えることを目的とした変更です。

■イスラム金融のしくみ
じつはイスラム法では、お金がお金を産む「利子」を受け取ることがコーランで禁止されています。金融取引で金利という概念を使えないのは痛いのですが、そこをイスラム法が容認しうる方法でいろいろ「工夫」することで通常の金融取引と経済的に同等の価値を実現するのが、いわゆる「イスラム金融」なのです。

そして、ここで言う「工夫」が、監督指針で言うところの「商品の売買」、「物件の賃貸借」及び「顧客の営む事業に係る権利の取得」にあたります。但し、そうした取引が適正かどうかは、銀行に設置されるイスラム学者委員会で事前に認定される必要があります。

「商品の売買」を用いた最も単純なローンの仕組みでは、銀行とローンを借りる顧客とが、何らかの商品の売買契約を二つ同時に結びます。銀行は一方の契約では購入者となり、他方では販売者となります。販売価格を購入価格より高くし、そのタイミングを一定期間後とすることで、売買額の差額がその期間の金利見合いとして、銀行の収益となります。

■規制緩和の意義
「バイアルイナ」と呼ばれるこの方法では、銀行による商品の売買はあくまでも形式的なものです。監督指針改正案は、この形式的な商品売買について、『当該商品の売買代金に係る信用リスク以外に商品に関するリスクを銀行が負担していないこと』と、はじめて定義したのです。

つまり、イスラム金融を行う銀行は、売買を顧客がちゃんと履行するかどうかという顧客の信用リスクだけをとるべきであり、その他のリスク、例えば銀行が保有する間に商品が売買不能となるようなリスク等をとってはいけない、というのが、金融庁が定めるイスラム金融を行うための要件なのです。

商品売買を用いた他の方法のほか、賃貸借契約や事業の権利取得に係る方法においても、これと同様に顧客の信用リスク以外のリスクをとらないことが、金融庁が考える許容可能な「形式的な取引」であり、邦銀がイスラム金融を直接行う要件になります。

ここで、税務の知識やビジネスセンスのある方であれば、「形式的とは言っても売買取引だと、消費税がかかって効率の悪いファンディングになるのでは」と、考えられるのではないでしょうか。確かに、この方法でイスラム金融を行うには、形式的な取引については消費税を賦課しないという扱いが必要になります。

この点については、おそらく、不動産の特定目的信託を用いた日本版スクーク(イスラム債)で、組成に伴う不動産の信託及び買戻しについて税法上は不動産の譲渡がなかったものとして扱われるのと、同様の扱いとなるのではないでしょうか。

■イスラム金融拡大への期待
現地法人ではなく銀行本体がイスラム向けの融資業務等を行うことができるようになれば、国内でだぶついた資金を高成長のイスラム諸国で運用することが可能になります。また、イスラム圏での資金の出し手としてプレゼンスが増せば、オイル等の他の重要分野での交渉力にも影響があるかもしれません。

2兆ドル超とも言われるイスラム金融市場では、今のところ大きく出遅れている日本ですが、今回の規制緩和を契機に、ガラっと状況が変わることも考えられなくはないように思います。ジャパニーズ・バンカーの頑張りに期待します。

是非、以下の記事も参考にしてください。
■借金返済のために風俗店で働く女子学生の問題が、本当は奨学金のせいではない明らかな理由。
■話題沸騰「正社員制度をなくしたらどうなるか問題」を、ファイナンス論的に考えてみた。
■ちきりんvsイケダハヤト「通勤手当廃止」論争で語られなかった「住まいの問題」緩和策。
■一年で3回転職したアラフォー女子、年収倍増は幸運だけが理由じゃなかった。
■海外馬券の販売開始か?日本での馬券売上のインパクトとマネーロンダリングの可能性。

■まとめ
・金融庁は、銀行監督指針を改正することで、邦銀が直接イスラム金融を行うことを認める見通しです。
・利子を認めないイスラム金融では、商品売買等の形式的な取引によって通常の金融取引を模倣します。
・監督指針が定めるイスラム金融の要件は、形式取引に係る追加的なリスクがないことです。
・イスラム金融における邦銀のプレゼンスが増せば、他にも良い影響があるかもしれません。