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「女性就労増加で労働生産性が過去最高」って本当!?


日本の労働生産性が最新の統計で過去最高を更新した、というニュースはご存知でしょうか?

私たちが普段目にする日本の労働生産性について伝える情報には、「他の先進国に比べて低すぎる」「無駄な残業が多いせいだ」等々、とかくネガティブなものが目立つので、「過去最高」と言うのは、意外に感じる方も多いかもしれません。

■名目労働生産性は過去最高水準に
日本生産性本部が今月初めに発表した2016年版「日本の労働生産性の動向」によれば、最新のデータである2015年度の時間あたり名目労働生産性は4,518円で、過去最高を8年ぶりに更新しました。これまでの最高値が4,416円だったので、実に100円以上も上回ったことになります。

それほど大きなニュースになった記憶はないのですが、これをメディアはどのように報道したのでしょうか? Google検索では、日本経済新聞と読売新聞が報道していたことが確認できましたが、総じてあまり大々的には報じられていなかった印象です。

その中で、このニュースを「名目労働生産性、8年ぶり最高 女性就労増加で」との見出しを打って報じたのが、日本経済新聞です。

日本生産性本部は日本の名目労働生産性が2015年度に1時間あたり4518円と前年度に比べ2.3%増えたとの調査結果をまとめた。4年連続で増え、8年ぶりに過去最高を更新した。短時間労働が多い女性の就労が増えたため。ただ欧米に比べると生産性はなお低い。長時間労働の是正や在宅勤務の推進などを通じ、生産性をさらに引き上げる必要がある。(日本経済新聞電子版、2016/10/31付)

短い記事ですが、「短時間労働が多い女性の就労が増えた」ことが、時間あたり労働生産性が過去最高まで改善した要因だと、はっきりと書いています。

これが本当なら、本当に凄いことだと言えるのではないでしょうか?

■女性就労増は労働生産性を向上させる?
この、「女性の就労増加によって一人あたり労働時間が短縮され、それによって時間あたり労働生産性が改善された」というストーリーは、本当にそうであればとても素晴らしいことですし、政府が喫緊の課題として掲げている「女性の活躍促進」や「長時間労働の抑制」に向けた取り組みを強力にサポートするものになるでしょう。

労働生産性は、アウトプット(付加価値額や生産量など)をインプット(労働投入量)で割ることで得られる指標です。労働投入量として労働者数を用いれば一人あたり労働生産性、総労働時間(=労働者数×一人あたり労働時間)を用いれば時間あたり労働生産性です。

時間あたり労働生産性 = 生産量÷(労働者数×一人あたり労働時間)

ですので、時間あたり労働生産性を向上させるには、(1)~(3)の少なくともいずれかが必要になります。
(1)生産量を増やす
(2)労働者数を減らす
(3)一人あたり労働時間を減らす

参照した日本経済新聞の記事は、男性と比べて短時間勤務の多い女性の就労が進んだことで(3)が実現し、時間あたり労働生産性が改善した、という思考になっているのでしょうか。計算式だけを見れば、確かにそう言えなくもないように見えるかもしれません。しかし、そこには、とても基本的ではあるものの意外にやりがちな、大きな間違いが一つあるのです。

■時間短縮が生産量を減らすのは当たり前
当然ですが、労働生産性向上の3つの条件は、互いに無関係ではありません。例えば、工場のラインのような仕事であれば、労働時間を減らせば生産量はそれに比例して減少します。ここで、インプットとアウトプットが同時に同じように減ってしまっては、生産性はまったく改善しません。インプットよりもアウトプットの減りが緩やかな場合は、労働生産性は改善します。増やす場合の考え方も同様です。

すなわち、仮に、短時間労働が多い女性の就労割合を増やすことで時間あたり労働生産性が上がったとすれば、それは「短時間労働が多い女性」の労働生産性がそもそもそれ以外の人たちの労働生産性よりも高かった、というだけのことなのです。

では、実際にはどうなのでしょうか? 個別に見るのであれば、そういうケースも大いにあるかもしれません。ですが、一般論として考えた場合、パートタイム労働者の時間あたり労働生産性が労働者全体の時間あたり労働生産性よりも高いとすることは、合理的とは言えないでしょう。

「女性就労が増えたら労働生産性が過去最高を更新した」という話は、勘違いだったわけです。

■問題はごちゃ混ぜにしない方が良い
労働生産性問題は、長時間労働問題や女性の就労問題と併せて語られることが多いのですが、実はそうした議論は日本の労働生産性問題の本質ではないと、筆者は考えます。女性の就労促進も、長時間労働の解消も、日本に暮らすすべての方の厚生のために大いに進めて欲しい大事なことです。ですが、それらを労働生産性対策としてことさら取り上げることで、日本の労働生産性の本当の問題への焦点を曇らせることになっていないかと。

上述の通り、女性の就労をどれだけ促進しても、女性の労働生産性が男性の労働生産性よりも高くなければ全体としての労働生産性は改善しません。長時間労働の解消は、それが非効率な残業時間の短縮という形であれば、時間当たり労働生産性の改善には寄与するでしょう。ですが、時間当たり労働生産性だけではなく一人あたり労働生産性も低いのが、国際的に見た日本の特徴ですので、その効果はあくまでも限定的です。

日本の労働生産性の問題は、端的に言えば、労働投入量のわりに、付加価値が、生産量が、少ないという問題です。そのうち働き方改革で改善できるのは、いいとこ一割程度でしょう。インプットのほうをゴニョゴニョ弄るのではなく、同じ投入量でどうやったらより大きなゲインが得られるのか、国や企業や国民一人ひとりが、その方向で見据えて行った先にこそ、日本の未来があるのだと思います。

【参考記事】
■日本がギリシャより労働生産性が低いのは、当たり前。
■日本が先進国で最下級だという「幸福度」ランクについて、みんなが勘違いしていること。
■日銀のマイナス金利政策は、大成功だが、大失敗だ。
■報道の自由度ランキングは、どう偏っているのか。
■映画『マネー・ショート』を見ていて混乱するのは、「空売り」を予習したせいだ。

サンプリングの基準が変更された場合のサンプル構成の変化について。


標本調査の基本中の基本として、標本をサンプリングする基準が調査目的に照らして合理的かつ一貫しなければならないのだが、巷に溢れる統計資料の中には、ここに問題があるケースもあるようだ。また、調査自体に問題がなくとも、調査主体や報道機関等が調査結果を用いる際に、適切ではない解釈をする場合もある。

ここでは、サンプリングの基準が変更された場合のサンプル構成の変化について、「遊園地へ行く頻度」を基準として採用した場合を例に考えてみる。

推計の元になる「遊園地へ行く頻度」のデータは、インターワイヤード㈱運営のネットリサーチDIMSDRIVEによる公開テーマ別調査「『遊園地』に関するアンケート」の結果の一部を参考にした。この調査は、2010年5月に実施され、全国の男女8,164人を対象としている。

■サンプリング基準変更の影響を推計
「遊園地へ行く頻度」が、

①直近1年に2回以上行った
②直近1年に1回以上かつ直近2年に2回以上行った

の間で、どの程度違うのかを検討する。

まず、最初の表では、「遊園地へ行く頻度」の問いに対する答えのグループごとに、①と②、それぞれの条件をクリアする確率を、大雑把にではあるものの妥当と思われる水準に設定した場合に、サンプル(計300人)の構成がどう変化するのかをまとめた。

半年に一度程度以上遊園地に行くグループをA、一年に一度程度以下しか遊園地に行かないグループをBとすると、①のサンプリング基準では、標本内でのAとBの比率は 3:1程度である一方、②のサンプリング基準では、AとBの比率は 1:1程度である。


二つ目の表では、「遊園地へ行く頻度」の問いに対する答えのグループごとに、①と②、それぞれの条件をクリアする確率を、初めに推計している。推計のベースは、グループごとに設定した「任意の一週間に遊園地に行く確率」の仮定である。

先ほどと同様、半年に一度程度以上遊園地に行くグループをA、一年に一度程度以下しか遊園地に行かないグループをBとすると、①のサンプリング基準では、標本内でのAとBの比率は 2:1程度である一方、②のサンプリング基準では、AとBの比率は 1:1程度となった。

■結論
「遊園地へ行く頻度」を「①直近1年に2回以上行った」から「②直近1年に1回以上かつ直近2年に2回以上行った」に変更することで、標本内におけるグループAのグループBに対する重要度は、1/2程度から1/3程度に低下すると考えるのが妥当であろう。

統計データを時系列で眺めたりクロスセクショナルに比較する場合に、こうしたサンプリングの違いによる偏りを十分に考慮すべきことが極めて重要であるのは、言うまでもない。

ポケモンGOをどれだけやるとポケモンを全種類集められるのか? 本邦初!?ポケモン図鑑完成まで1万人分シミュレートしてみた。

※ 「サーチ・アプリ」や「脱獄」等の「不正」によってポケモン収集を極端に効率化することは可能ですが、当然ここでは「不正」を行わない前提で計算しています。


「ポケモン図鑑を完成させるまでは止められないな。」

公開当初の異様な盛り上がりが収まりつつある中、そんなことを考えながら、昨夜もポケモンGOをプレイしていました。

■終わりが見えない仕事はつらい
ポッポやコラッタのようなどこにでもいるポケモンを捕まえながらのんびりゲームを楽しめる人や、他プレイヤーとのバトルを中心にやっている人は別ですが、筆者がそうであるように、おそらく多くのプレイヤーにとっては「ポケモン図鑑の完成」という目標が、ポケモンGOを続ける大きなモチベーションとなっています。

流行に乗ってポケモンGOを始めたものの早々に止めてしまった人たちの中には、思うようにポケモンを集められないことに嫌気がさしたという方も少なからずいることでしょう。ポケモンを捕まえることを義務や作業のように感じてしまうと、捕まえても捕まえても終わりが見えない状況はまさに苦行です。

では、実際のところ、どのくらいポケモンを捕まえれば全種類集められるのでしょうか? ポケモンGOプレイヤーにとって重要なこの関心事を、証券分析に用いるシミュレーションの手法によって検討してみましょう。

■1万人分のシミュレーション結果
シミュレーションでは、仮想のプレイヤー1万人がポケモン図鑑を完成させるまでに、各々何匹のポケモンを捕まえたのかを計算しました。各ポケモンとの遭遇確率は、ポケモンGOに関する英語ニュースサイト「Pokemon GO Hub」の8/26付記事に掲載されたデータに独自の補正を加えた確率分布に基づいています。
(但し、「進化」による新たなポケモンの獲得は反映していますが、個人差が大きい「卵の孵化」によってポケモンが生まれる効果は反映させていません。最近リリースされた「相棒」機能についても同様です。)

シミュレーション結果は、図の通り。最頻値周辺(=捕獲数3万5千匹前後の山の高い部分)に集中する一方で、捕獲数が多くなる右方向に太く長いテールを持つ、いわゆる「ファットテール」と呼ばれる分布です。これは、プレイヤーの大部分が比較的リーズナブルな捕獲数で図鑑を完成させる一方、一部の人は気が遠くなるような数のポケモンを捕えなければならないことを意味しています。

仮想の1万人の中で、最少捕獲数でポケモン図鑑を完成させた最も幸運なプレイヤーが捕えたポケモンの数は8,978匹でした。1万匹に満たない数のポケモンで図鑑をコンプリートした唯一のプレイヤーです。逆に、最も手間がかかってしまったケースでは、実に38万匹近くのポケモンを捕まえてようやく図鑑を完成させることができました。

ダメなときが物凄くダメで、且つ、そうなる確率が意外に高いのが、リーマンショックなどの金融危機でおなじみ「ファットテール」の特徴です。証券投資の世界では、ファットテールのハイリスクを理解して織り込むことがリスク管理の観点から重要なのですが、ポケモンGOの場合はどうなのでしょうか。

シミュレーションの結果をもう少し詳しく見ておきたいと思います。

1万人の仮想プレイヤーのちょうど真ん中、図鑑完成時の総捕獲数の中央値は38,343匹でした。3万8千匹ほど捕まえれば、2人に1人はポケモン図鑑を完成できるということです。また、概ね6万5千匹捕まえることで、5人中4人が図鑑を完成できます。その一方、ポケモンを10万匹捕まえても終われないプレイヤーも全体の7%程度おり、100人に1人は、ポケモンを16万匹以上捕まえても全種類をコンプリートできないのです。

■図鑑完成には、どのくらいの時間がかかるのか
「ポケモンを○万匹捕まえる」という表現では、それがどのくらいの労力なのか、ややイメージしにくいかもしれません。そこで、上にあげた主な数字を、大雑把に時間換算してみることにします。採用する換算レートは、

1時間 = ポケモン20匹

です。時間あたり何匹のポケモンを捕まえられるかは、アイテムの利用や特定の場所、移動方法等、様々な条件に影響されるのですが、ここは筆者の経験から、だいたい平均するとこのくらいかな、というところで決めました。人によって大きく異なるところではあります。

まず、最も捕獲数が少ないラッキーなケースで、約450時間。日本生産性本部による「日本の生産性の動向 2015年版」によれば、直近の一般労働者(フルタイムの労働者)の年間労働時間が2026.5時間ですので、この最も恵まれたケースでも、ポケモン図鑑完成に年間労働時間の1/5以上を費やしていることになります。また、最もアンラッキーな38万匹捕獲した人の場合は、年間労働時間の実に9倍もの時間を費やしたことになります。

これが、一万人のちょうど真ん中、中央値である3万8千匹余りを捕まえたごく普通のプレイヤーになると、およそ1,920時間です。あまり残業をしない人の一年間の総労働時間くらいでしょうか。ポケモン図鑑の完成を目指すというのは、知らない間に一年がかりのプロジェクトにフルタイムで参加するようなものなのかもしれません。

また、中央値ではなく平均で見ると、総捕獲数は約4万8千匹となり、時間に換算すると2,400時間。平均的な労働時間の約1.2倍です。かなりの頑張り屋さんにも思えますが、実はプレイヤー全体の3分の1は、これよりも重労働なのです。

■ポケモン図鑑完成まで頑張るべきか?
このように、ポケモンをひたすら捕まえ続けてポケモン図鑑を完成させるというのは、生半なことではありません。年間労働時間くらいでコンプリートできればマシなほうで、運が悪いと何年も働くぐらいの労力が必要というのは、目標への思いを挫くには十分すぎるレベルです。また、ポケモンの卵を孵化させることでポケモン集めを効率化できるようになってはいるものの、孵化を効果的に行うには孵化器をたくさん購入する必要がありますので、「そこまでしなくても…」と考える人も多いでしょう。

当初の爆発的な人気から一転、アクティブユーザーが減り続けている最近のトレンドは、このゲームを何となく続けているような人たちが離脱したというだけではなく、「ポケモン図鑑の完成」のようなはっきりとした目標を持った人たちが、「さすがにもう頑張れない」と、堪えきれず徐々に脱落していく状況を反映しているのでしょう。

結局のところ、ポケモンGOを本当に長く続けられる人というのは、目標に固執せずに、のんびり楽しめる人だけなのかもしれません。

注: ポケモン図鑑のうち、未だリリースされていない一部のポケモンについては考慮していない。

【参考記事】
■日本が先進国で最下級だという「幸福度」ランクについて、みんなが勘違いしていること。
■日本がギリシャより労働生産性が低いのは、当たり前。
■報道の自由度ランキングは、どう偏っているのか。
■映画『マネー・ショート』を見ていて混乱するのは、「空売り」を予習したせいだ。
■日銀のマイナス金利政策は、大成功だが、大失敗だ。

五輪の金メダルは、どんどん重くなっている。

「いつもより重い気がする」

リオデジャネイロ五輪レスリング女子58kg級に優勝し金メダルを獲得した伊調馨選手は、メダルをかけた感想を訊かれ、そうコメントしました。

■重量化する五輪メダル
女性として世界で初めて五輪競技を四連覇する偉業を成し遂げた、その金メダルですから、特別な思いが詰まった「いつもより重い」ものであるのは当然です。ただ、今回の五輪では、伊調選手に限らずメダルを獲得した多くの選手が口々に、メダルが重い、重いと言っています。これはやはり物理的な重量そのものについてそう言っているということなのでしょう。

伊調選手が初めて五輪で優勝したのは2004年アテネ大会です。そのとき獲得した金メダルの重さは135gでした。以降、北京200g、ロンドン412gと、伊調選手が優勝を重ねるたびにメダルは重く大きくなり、今回のリオデジャネイロ五輪で夏季五輪としては初めて500gの大台に到達しました。この12年間で4倍近く重くなったわけです。

500gと言えば、500mlペットボトルほどの重さです。例えば、金、銀、銅をコンプリートした萩野公介選手の場合では、首から下げた3つのメダルの総重量は水が一杯に詰まった1.5Lペットボトルに匹敵します。これはかなり重たそうです。

■五輪メダル120年の軌跡
良く知られているように、史上初めて開催された五輪は1896年のアテネ大会です。この五輪ではまだ金メダルがなく、一位が銀、二位が銅で、三位以下にメダルはありませんでした。重さは47gで、リオデジャネイロ五輪と比べると1/10に満たない軽さ、直径も現在の約半分程度でした。それが120年かけて直径85mm、重量500gまで大きくなったのですが、その成長分のほとんどは実は比較的最近のものなのです。

グラフは青線が120年間、28大会分の夏季五輪のメダル重量の推移を示しています。各大会のメダルの重さはWikipediaを参考にしました。2000年代以前は全体として緩やかな増加傾向が見てとれますが、1900年代初頭には夏季大会のメダルが20g台だった時期もありました。この時期の金メダルは現在のように銀にメッキをしたものではなく高価な金そのものだったため、どうしても小さなサイズにならざるを得なかったのでしょう。

120年間のメダル重量の増加率を年率換算するとおよそ2%です。当初から10倍以上も重くなったとは言え、年率に換算するとその程度なのです。少し前までの、マイナス金利が導入される以前の住宅ローン金利と同じくらいでしょうか。

2%はまた、現在の黒田日銀が安定化の目標としている物価上昇率と同じです。つまり、日銀の狙い通り物価上昇率が2%で安定した場合、120年もすると物価が10倍超になるということになります。四半世紀もデフレ経済のもとでの生活に慣れてしまうと、120年という長期ではあっても、物価が10倍を超す状況は想像し難いものがあります。

■先行指標は「冬季五輪」
2004年アテネ五輪以降、急激に重量化してきた夏季五輪のメダルですが、まだしばらくはこのペースで重くなるかと言えば、恐らくそうはならないでしょう。今後は当分の間、500g前後のレンジで推移するのではないかと想定しています。上述の通り、500gというのは既に相当な重さなのです。

これに関しては、先行して500g超えを達成していた冬季五輪の最近の傾向を参考にすべきでしょう。冬季五輪では、2002年開催の米ソルトレイクシティ五輪で史上初めて500gを上回る567gのメダルが生まれました。その四年前に開催された長野五輪では261gでしたので、一度に二倍超までも重くなったわけです。続くトリノ五輪でやや揺り戻しがあったものの、その後はバンクーバー、ソチと、500g台で推移しました。夏季五輪についてもこれと同様の傾向を示すことになるだろうと予想しています。

先ほどの図では橙線で冬季五輪のメダル重量の推移を示していますが、全体的な傾向として、冬季五輪が夏季五輪に対する先行指標であるように見えます。冬季五輪のメダルが夏季五輪に先行して重量化したという見立てが正しいとすると、そうなった最大の理由はおそらく、冬季五輪で授与されるメダル総数が夏季五輪より遥かに少なく、重量化に要する追加的な費用が小さかった点でしょう。過去28回の夏季五輪での平均授与メダル数560個(リオデジャネイロ五輪では974個)に対し、過去22回の冬季五輪での平均授与メダル数は、130個と断然少ないのです。

先行指標である冬季五輪のメダル重量の推移を参考に2020年東京五輪での金メダルの重さを筆者なりに予想すると、トリノ五輪と同じパターンで一時的な揺り戻しによってやや軽量化し、450g程度になるのではないかと見ています。

伊調選手が東京五輪で五連覇を達成したなら、きっとこうコメントしてくれるはず。

「いつもより軽い気がする」

【参考記事】
■報道の自由度ランキングは、どう偏っているのか。
■日本がギリシャより労働生産性が低いのは、当たり前。
■日本が先進国で最下級だという「幸福度」ランクについて、みんなが勘違いしていること。
■映画『マネー・ショート』を見ていて混乱するのは、「空売り」を予習したせいだ。
■日銀のマイナス金利政策は、大成功だが、大失敗だ。

株式公開前にもかかわらず、LINE株に高値で買い注文が入った件。


今週7月14日に米国で、15日に日本で予定されているLINE株式会社のIPO(新規株式公開)に関連して、ブルームバーグにちょっと面白い記事が掲載されていました。

株式上場前ですので、当然まだ取引所での売買注文は受け付けられていないにもかかわらず、既に公開価格3,300円を15%も上回る高値での買い注文が入っているというのです。

(引用)『キャンター・フィッツジェラルドによると、13日のグレーマーケットでIPO価格を15%上回る3800円の値が付き、その後売り注文の値段は4000円を上回っている。チャーチル・キャピタルのセールストレーダー、トム・レスキ氏(シンガポール在勤)は買い値3900円に対し4200円の売り値があると明らかにした。LINEは15日に東京証券取引所1部に、ニューヨーク証券取引所には14日に上場する。』

(2016年7月13日付ブルームバーグ記事『LINEが上場前のグレーマーケットで人気、IPO価格を15%上回る』より抜粋。)

■公開前の価格は公開価格15%増し
記事のとおり、ある業者では3,800円の買い注文を受けた一方、4,000円を上回る高値での売り注文が入り、別の業者には買い値3,900円に対し4,200円での売り注文があったとのこと。ちなみに、3,900円は公開価格の18%増し、4,200円は同じく27%増しです。売りも買いも注文があったものの、記事の範囲では、売買はまだ出合っていないようです。

一般にはあまり知られてはいませんが、主に機関投資家の間での取引になるものの、人気の高い新規公開間近の株を、実際に株式公開されることを条件として公開前に取引することは珍しいことではなく、そうした市場はグレー・マーケットと呼ばれています。市場とは言っても、東証やNY証券取引所のようなオープンな取引所での市場取引ではなく、相対での取引です。

IPOのグレー・マーケットで取引されるのは公開前の株ですので、取引の対象は株式の現物ではなく先物になりますが、基本的には、IPOが実際に行われて、通常の市場で取引が開始されたところで決済されることになるのです。

公開前のLINE株にこれだけ高い値が付いたのは、それだけLINEの上場が注目され、人気が高いためです。今年のIT企業のIPOとしては世界最大級ということもあるのでしょう。IPOで買いたくても十分に買えなかった人が多く出たことで、グレー・マーケットでの高値での取引が行われやすくなったのです。

日本経済新聞の12日付記事によれば、公募株数に対する応募倍率は約25倍と人気を集めているのですが、そのうち国内の個人投資家が18倍、機関投資家が13倍程度であった一方、海外投資家の応募倍率は20倍台の後半と、海外での引き合いが特に強かったのでした。

比較として、昨年最も注目されたIPO銘柄であった日本郵政グループを見てみると、最も人気が高かったかんぽ生命でも応募倍率は15倍程度でした。ですので、LINEの約25倍と言うのは、極めて高い人気だと言えます。なお、日本郵政グループの場合、グレー・マーケットでの値付けは公開価格の5~7%増し程度だったようです。

■グレー・マーケット価格は初値にどう影響するか
一般に、グレー・マーケットでの価格は、株式公開後初値が上下どちらの方向で決まるかの目安になると考えられています。グレー・マーケット価格が公開価格よりも高ければ、当然、株価が上昇することが期待されているのです。逆も然りでしょう。グレー・マーケットでの価格が公開価格を15%も上回っていると伝えられているLINEの場合、同様にグレー・マーケットで高値がついた銘柄を参考にするのが良いでしょう。

その意味では、筆者自身が在籍した当時にIPOを実施した新生銀行は、良いサンプルと言えるかもしれません。新生銀行の場合、グレー・マーケット価格が公開価格の33%増しと高く評価されたのですが、公開後初値はさらに高く、公開価格の66%増しとなったのです。

仮に、LINEの場合も同様に公開価格からの増分がグレー・マーケットの2倍程度になると考えた場合、公開価格3,300円の約30%増しである4,300円程度が、LINE株の初値として相応しいということになります。あくまでも、新生銀行のときと同じパターンになれば、ということなのですが。

このように、当該株式への投資家の需給が反映されるグレー・マーケット価格は、上場後の株価推移を占う上での有用な材料となりえます。しかし、そこで反映されているのはあくまでもほんの一部の投資家による需給であることを忘れてはなりません。また、本来公ではない相対取引の情報であるグレー・マーケット価格は、誰かが何らかの意図のもとで漏らした、見せ板のようなものだと考えるべきなのかもしれません。

もう間もなく上場されるLINE株。果たして、初値はいくらになるのでしょうか。

【参考記事】
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■映画『マネー・ショート』を見ていて混乱するのは、「空売り」を予習したせいだ。
■英不動産ファンド2.4兆円の解約請求は、なぜ凍結されたのか。

ダイエットと金融市場の共通点


夏休みシーズン直前のこの時期、水着や薄着になったときに少しでも可愛く&格好良く見せたいなどの思いから、ダイエットに励んでいる方もたくさんいるのではないでしょうか。あるいは、筆者のように、医者から痩せるように言われて渋々ジム通いとカロリー制限を始めた人もいることでしょう。統計にもよるのですが、日本は女性の8~9割以上、男性の半数程度以上が、ダイエット経験者だと言われています。ダイエットに関していくつもウンチクが言えるダイエットの達人のような人も少なくないように思います。

■意外に変動の大きい健康指標“体重”
ですが、そんな達人たちですら案外やってしまいがちな間違いが、一つあります。それは、日々の体重変化につい一喜一憂してしまうこと。ダイエット経験者であれば、おそらく誰もが、体重変化に過度に反応すべきでないということを頭では理解しています。にもかかわらず、気がつくと、一日に何度も体重計に乗っていることがあるのです。

体型や体の大きさ等にもよりますが、朝起きて夜寝るまでの間にも体重が1~2kg程度変動することは珍しくないと言われています。トイレに行けばその分体重が減るし、何か口にすればその分増える。そんなことは当たり前だし、一々計っても仕方がないのは重々承知のはずなのに、何故か気になってしまう。それが原因で、結果的にダイエットがうまくいかなくなることもあるでしょう。また、あまりにも体重変化に囚われ過ぎてしまうと、食事をすることすら怖くなってしまうこともありえます。これは非常に危険なことです。

そうならないためにも、ダイエット時は一日一回、毎回必ず同じ条件(時間、服装等)で計測し、その結果に一喜一憂しないことが大切なのです。体重は、一定せずブレやすく、ある程度長めのスパンでその変化を把握すべき健康指標なのです。過去に10kg超のダイエットを二度成功したことのある筆者の経験では、体重の推移は概ね1週間程度のスパンで把握していくのが良いようです。具体的には、毎日、その日までの最近7日間の体重を平均したものを指標とすると良いでしょう。

このように対象範囲を少しずつずらしながら平均をとっていく指標を“移動平均”と言いますが、株価推移等を見る際にも頻繁に用いられる便利な指標なのです。

■経済指標に一喜一憂する投資家たち
実は、数字に一喜一憂するというのは、金融市場の投資家たちも同様です。例えば、先週7月8日に米雇用統計が発表されましたが、これがポジティブなサプライズとなり、米国の株式市場は一転明らかな上げ相場となっています。現地時間7月12日午前には、NYダウが過去最高値の1万8312ドルを記録しました。

米雇用統計では、日本でもお馴染みの失業率等も発表されているのですが、発表される雇用関連指標の中で最も注目されるのは失業率ではなく、“ノンファーム・ペイロール”と呼ばれる「非農業部門雇用者数の増減」なのです。この指標は、金融市場での投資判断のための単独の材料としては、おそらく世界で最も重要なものの一つです。

最近4カ月分のノンファーム・ペイロールは、次の通りです。

年 月 : 速報値(市場予想) 翌月修正値(直近修正値) サプライズ
2016年3月: 21万5千人(20万人) 20万8千人(18万6千人) ポジ小
2016年4月: 16万人(20万7千人) 12万3千人(14万4千人) ネガ中
2016年5月: 3万8千人(15万5千人) 1万1千人(1万1千人) ネガ大
2016年6月: 28万7千人(17万5千人) -(-) ポジ大
(「Yahoo!Finance」及び「米労働省労働統計局」資料より。)

7月8日に発表された6月の雇用統計が、市場予想17万5千人増に対し速報値が28万7千人増と11万2千人も多かったことからポジティブなサプライズとなったわけですが、金融市場の投資家は、単に大きな値だから反応するというわけではなく、市場の予想と比べてどうなのかというところを見ていました。予想と結果が大きく乖離したことで、サプライズが生まれたのです。

ところで、6月のポジティブ・サプライズは、冷静に見れば、単に先月のネガティブ・サプライズの揺り戻しと考えることもできるかもしれません。先月は速報値が市場予想より12万人近く少ない3万8千人だった上に、その数字は今回さらに小さく修正され、1万1千人であったと発表されました。二カ月トータルで考えると、実は、市場予想とあまり変わらない結果だったのです。

(注:ノンファーム・ペイロールの過去の値は頻繁に修正されます。前月分の修正まではフォローする場合が多いですが、重要な指標のわりに、過去分の修正については何故かあまり省みられることはありません。)

■経済指標の“ブレ”に一喜一憂する理由
図は、上のグラフがノンファーム・ペイロールの市場予測と速報値を長期間観測したもので、それぞれ値が上下に変動する部分をフィルタリングにより取り除いた“トレンド成分”のみを比較しています。

このグラフにより、上下に変動するブレの部分を除けば、実は、市場予想と速報値が同じような動きをしていることがよく分かります。すなわち、毎月雇用統計が発表される度にサプライズの水準によって反応する金融市場は、単に上下にブレるノイズに反応しているだけなのだとも言えるのです。

下のグラフは、サプライズ、即ち予想と速報値の差異と、速報発表翌月の修整幅の分布を、それぞれ示しています。予想と速報値の差異の方が全体に大きく広がり、マイナス方向にやや偏りが見られますが、速報発表翌月の修正はポジティブ方向への変更が多くなっており、平均的には、ネガティブなサプライズは翌月にやや緩和される傾向があることになります。

このように、指標のトレンドではなくブレて変動する部分に過剰に反応するという点では、ダイエットに励むあまり日々の体重変化に過剰反応するダイエット女子(男子)と金融市場には、それほど大きな違いはありません。しかし、その判断が合理的かどうかという点においては、両者は大きく異なっているのです。

上述のとおり、体重変化に反応してしまうのは合理的ではありませんが、投資家が経済指標のブレに反応するのには、ちゃんと理由があるのです。投資家にとって重要なのは、自分がどう思うかではなく、他の市場参加者がどう反応するだろうか、ということです。他の人が買うだろうと思えば、基本的には自分にとっても“買い”が正解だし、売るだろうと思えば、自分も“売り”を選ぶのが自然なのです。

金融市場は、本当の意味で合理的な市場となっているわけではありませんが、それぞれの投資行動に関しては、所与の条件の下で、合理的な判断を積み重ねているのです。

【参考記事】
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■英不動産ファンド2.4兆円の解約請求は、なぜ凍結されたのか。

日銀のマイナス金利政策は、大成功だが、大失敗だ。


2016年1月29日(12時38分)、黒田日銀は、金融政策決定会合の結論としてマイナス金利政策の導入を発表しました。それから、5カ月。2016年上半期の区切りということもあり、このあたりで一度、マイナス金利政策の成果についておさらいしてみましょう。

■そもそもマイナス金利を導入した理由
マイナス金利政策の成果を省みる前に、まず、日銀がなぜマイナス金利を導入したのか、確認しておきたいと思います。

日銀は、当日発表した資料の中で、マイナス金利政策導入の目的を次のように言っています。

(企業コンフィデンスの改善や人々のデフレマインドの転換が遅延し、物価の基調に悪影響が及ぶ)リスクの顕現化を未然に防ぎ、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入することとした。日本銀行当座預金金利をマイナス化することでイールドカーブの起点を引き下げ、大規模な長期国債買入れとあわせて、金利全般により強い下押し圧力を加えていく。

(2016年1月29日付日本銀行発表資料より。括弧内は、同資料の他個所からの抜粋。)

ここで、「イールドカーブ」とは、各年限の金利をグラフ上にプロットし、線で結ぶことでできるカーブを言います。イールドカーブの起点を引き下げるというのは、そのカーブの左端、つまり、最も短い年限の金利を引き下げるという意味です。

すなわち、日銀は、マイナス金利の導入によって、短期金利を引き下げ、それを従前から継続している国債買入策と併用することによって、フラットニング(勾配を緩やかにする変化)を伴いつつ、短期から超長期までのすべてのゾーンで、金利を大きく引き下げることを目指したわけです。

では、そうした日銀の狙いは、実際のところ、どの程度実現しているのでしょうか。

■目論見通り(以上?)の成果
ここで示す図は、マイナス金利導入前日の国債金利のイールドカーブと、直近6月28日のイールドカーブを比較したものです。

この5カ月で、イールドカーブが大きくフラットニングしつつ大幅に低下していることが見て取れます。変化のパターンは、短~長期(10年まで)と超長期(10年超)で異なります。

・ 短期ゾーンから長期(10年)では、0.3~0.5%程度低下するパラレルシフト(平行移動に近い変化)
・ 超長期(10年超)では、フラットニングしつつ大幅に低下(30年で1.2%→0.05%)

これは、上述の日銀が目指す変化そのものです。その意味では、日銀のマイナス金利政策は「大成功」だったと言えるでしょう。

ですが、この状況は、果たして本当に望ましいものだったのでしょうか?

『リスクの顕現化を未然に防ぎ、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持する』という目標に寄与できているのでしょうか?

そもそも、日銀自身、果たしてここまでの大きな変化を想定していたのでしょうか?

■大荒れの金融市場
為替市場や株式市場といった金利市場以外の金融市場でも、マイナス金利政策の影響は小さくありません。為替では、この間、ドル円交換レート(三菱東京UFJ銀行仲値)が、1ドル118.66円から101.63へと、17円3銭も円高が進みました。

日本を基準に考えると、この円高によって米国等海外で買えるほとんどのものが14%程度安く買えることになったのですが、現在の日本政府の成長戦略は輸出志向ですので、極端な円高進行はむしろ招かれざる結果だったと言えるでしょう。

マイナス金利政策導入直後は、それが市場にどのように影響するのか十分に咀嚼(そしゃく)できていなかったこともあり、おそらく良い影響が期待できるのではないかとの思惑から一旦は円安に振れたものの、その後は徐々に円高方向に水準を切り上げていったのです。

日経平均についても、主に円高が進行した影響から、マイナス金利導入前日終値17,041円から6月28日終値15,323へと、1,718円下落しました。

こうした変化は、イギリスの国民投票の結果がEU離脱となったこと等も少なからず影響していますが、その基調を決定づけたのは、間違いなくマイナス金利政策であったと言えるでしょう。

■もはや”死に体”の金利市場
上の図で見たように、国債のイールドカーブは、超長期を含めて全体がいつマイナス圏へ突入してもおかしくないレベルまで低下しています。超長期ゾーンがマイナス圏となれば、超長期の負債が多い生保や年金基金ですら、国債を購入してそのまま保有するという形での投資は行わなくなる可能性があるでしょう。

普通に考えると、マイナス金利、それも日銀当座預金よりもさらに低い利回りでも国債を買うというのは、奇妙な話のようにも思えます。金融機関等が、何故こんな状況ですら金利が低く割高な国債を買うのかと言えば、買った後で日銀がそれをより高値で買ってくれるという「合理的な期待」があるからなのです。

しかし、これは本当に「合理的」なのでしょうか? 日銀も、いつまでも国債を買い続けることは、おそらくできないでしょう。いつかは出口を考えなくてはならないのです。

また、それ以前に、何らかのショックで国債市場が大きく暴落してしまうかもしれません。現在、国庫短期証券も含めた国債保有残高の一割強は外国人が保有していますが、国債市場での取引量で見ると、そのプレゼンスは市場全体の約3分の1にも上ります。市場は保有量ではなく取引によって動きますので、取引量の大きい外国人の存在は国債市場にとって大きなリスクにもなっているのです。

いざという時に「日本を支えよう」という気持ちは、外国人には一切ないと考えておくべきでしょう。

■それでも積み上がる日銀預け金
イールドカーブを大きく引き下げることに成功したマイナス金利政策ですが、これが経済にプラス方向に波及しなかった大きな要因が、直近の日銀資金循環表からおぼろげに見えてきます。

資金循環表によると、国内銀行による日銀預け金は、国内銀行が預かる流動性預金(普通預金等)が30兆円ほど増加したこと等から、2016年第一四半期に約20兆円増加しました。資金供給を増やすと、それが日銀の意図通り民間への貸出しに回ったとしても、巡り巡って日銀預け金を増加させることになるので、それ自体は必ずしも大きな問題ではないのですが、この間の国内銀行による貸出金は2兆円の減少となっているのです。

年度末ということもあり、貸出金の期日も集中しやすいという事情はあるにしても、マイナス金利という大胆な金融政策を導入した割には、あまりにも残念な状況と言えるでしょう。結局のところ、銀行の貸出しが伸びず市中に出回る資金量を思うように増やせないのは、もはや金利水準云々ではなく、資金需要が伸びていないだけのことなのです。

本来の目的にほとんど寄与できていないマイナス金利政策は、イールドカーブを大きく押し下げるという「大成功」の成果を上げたものの、ただただ金融市場のリスクを増大させた、史上稀にみる「大失敗」の悪手だったのではないでしょうか。

【参考記事】
■日本が先進国で最下級だという「幸福度」ランクについて、みんなが勘違いしていること。
■日本代表FW岡崎慎司のレスター優勝で賭け屋が大損した、本当の理由。
■日本がギリシャより労働生産性が低いのは、当たり前。
■報道の自由度ランキングは、どう偏っているのか。
■映画『マネー・ショート』を見ていて混乱するのは、「空売り」を予習したせいだ。

報道の自由度ランキングは、どう偏っているのか。


先月、フランスを拠点とするNGO「国境なき記者団」による「報道の自由度ランキング(Press Freedom Ranking 2016)」発表に数日遅れ、米国NGO「フリーダムハウス」が類似の指標である「報道の自由度(Freedom of the Press 2016)」を発表した。

■2つのランキングを比較する
国境なき記者団のランキングは日本の多くのニュース・メディアがセンセーショナルに報道したので、ご存知の方は多いと思う。先進国であるはずの日本が報道の自由度で180カ国中72位(前年61位)と低位にランクされたというニュースは、確かにインパクトがあった。

一方、同時期に発表されたフリーダムハウスの報道の自由度については日本ではあまり報道されなかったので、知らない人が多いかもしれない。

Googleトレンドのスコアではフリーダムハウスが国境なき記者団を圧倒するように、グローバルな認知度ではむしろフリーダムハウスの方が高いとも言えるのだが、日本が全体の44位というフリーダムハウスの結果は良くも悪くもない印象で、ニュースとして扱うには平凡に過ぎたのだろう。

フリーダムハウスのランキングは、ツバルやソロモン諸島等の小国を網羅し、国境なき記者団が一まとめに扱う東カリブ諸国機構(OECS)についてもその構成国をそれぞれ別個に評価していることから、実は評価対象が20カ国も多く、両者を比較するにはまずここを調整しなくてはならない。

両者がどちらもカバーする評価対象は179カ国。その中での日本の順位は、フリーダムハウスが33位、国境なき記者団は変わらず72位だ。72位 vs 44位でも印象はかなり違ったが、72位 vs 33位となれば、違いはさらに際立つ。

では、どちらかの「報道の自由度」が偏っているのだろうか?

■偏りがあるのは当たり前
「報道の自由度(ランキング)」はどちらも偏っているし、そうなるのは当然のことだと言うのが、私の見方だ。こうした定性的な評価に基づく指標には、ランキング作成者の「価値観」が必ず反映されるからだ。

両者の評価手順を比べると、NGO自身が事前に決めた基準に従い専門の分析者が評価するフリーダムハウスに対し、国境なき記者団では当該国の関係者数十名程度のアンケート結果を数式に当てはめて評価値を算出するという違いがある。設定する評価基準や数式をどう決めるか、アンケート回答者として誰を選ぶか等によって、それぞれの組織の価値観が反映される。

評価のプロセスに価値観が反映される以上、そこに相応の偏りが生まれるのは自然なことなのだが、そうした偏りは、両者の評価点の分布によく表れている。

下図では、各国の評価点の平均からの距離を標準偏差の倍率として表し、その分布を比較している。

オレンジ棒が示すフリーダムハウスの評価点は、均一に近い平たい分布だ。基準に従い専門の分析者が評価を行うやり方は、分布を平均的に散らすような調整に向いているのだろう。

他方、青棒が示す国境なき記者団の評価点は、尖度が大きめの分布だ。尖度とは、確率分布の特徴を表す指標の一つで、尖度が大きい分布は中心が鋭く尖る一方、厚く長く伸びた裾を持つ。いわゆるファットテールだ。

左右の非対称性も国境なき記者団の特徴で、低評価方向にのみテールが長く伸びている。多くの国が平均近くに集まる中、一部の低評価の国を特に低く評価した分布だと言えるだろう。平均周辺に多く集中するのは、十分に組織展開できない国ではアンケート協力者を確保しづらい、といった事情があるのかもしれない。

■国境なき記者団はアジアが嫌い?
両ランキングの相対的な偏りがより顕著に表れているのが、地域ごとの扱いの違いだ。国境なき記者団がフリーダムハウスと比べ特に厳しく評価したのは、もちろん日本だけではない。

両者の評価順位の差を相対的な厳しさの指標とすると、国境なき記者団が最も厳しく評価した国はフィリピンで、以下、インド、マリ、インドネシア、ブルガリア、イスラエル、東チモール、モンテネグロ、日本と続く。アジアの国が目立つ印象だ。

実は、二つのランキング順位の差を地域ごとに平均すると、アジア太平洋が断然、国境なき記者団が相対的に厳しい態度をとっていることが分かる。(フリーダムハウスが相対的に優しい。)

逆に、ユーラシア(ロシア等)に対しては、フリーダムハウスの方が相対的に厳しい。(国境なき記者団が相対的に優しい。)

米国のNGOがアジアに相対的に寛大で、フランスのNGOが旧ソ連地域に相対的に寛大だという傾向には、納得できる。政情や歴史的経緯、地政学的な関係等が影響しているのだろう。

表:ランキング順位差の地域別平均

ユーラシア       -14.8位(かなり優しい)
サブサハラ・アフリカ  -7.7位(優しい)
北中南米        +1.4位(ほぼ同程度)
中東・北アフリカ    +1.5位(ほぼ同程度)
ヨーロッパ       +5.7位(厳しい)
アジア太平洋      +13.8位(かなり厳しい)

注:
ランキング順位差=国境なき記者団の順位 - フリーダムハウスの順位
()内は、フリーダムハウスと比較した場合の国境なき記者団の相対評価

とは言え、地域ごとの平均がマイナス14.8位やプラス13.8位だと言われても、それがどの程度の偏りなのか、あまりピンとはこない。

そこで、これを分かりやすく見るため、179カ国の順位差の分布を所与の確率分布と見なし、ランダム抽出による出現確率をシミュレーションにより概算してみた。

結果は、ユーラシア12カ国の平均が-14.8位以下となる確率が約0.26%、アジア太平洋32カ国が+13.8位以上となる確率は約0.034%である。

どちらも、かなり低い確率だ。

■比較して分かること
このように二つの「報道の自由度(ランキング)」を比べることで、どちらが正しいか分かるかというと、そうではない。そもそも、どちらか一方が正しいというようなものではない。

日本に関して明らかに言えるのも、「誰がどのような方法で計測するかによって、同様の指標で72位にもなれば33位にもなる」ということくらいだろう。

だが、身も蓋もない言い方になるが、こうしたランキングに一喜一憂するのが如何に馬鹿らしいかということだけは、分かって頂けるのではないだろうか。

【参考記事】
■日本が先進国で最下級だという「幸福度」ランクについて、みんなが勘違いしていること。
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■日本がギリシャより労働生産性が低いのは、当たり前。
■軽減税率で一番損なのは誰か、分かりやすく解説してみました。
■映画『マネー・ショート』を見ていて混乱するのは、「空売り」を予習したせいだ。

日本代表FW岡崎慎司のレスター優勝で賭け屋が大損した、本当の理由。


今月2日、サッカー日本代表FW岡崎慎司が所属するレスター・シティが、イングランド・プレミア・リーグ(1部リーグに相当)を創立132年目にして初めて制覇した。一昨年まで2部リーグに所属し、7年前には3部リーグ落ちまで経験していたチームの優勝は、チーム関係者や熱狂的な地元レスターのファンたちですら思い描くことのできなかったストーリーだ。

このレスターの「奇跡の優勝」によって大きな損失を被るのが、ブックメーカーと呼ばれる賭けの胴元だ。日本では公営ギャンブルを除けば合法的に賭けの胴元にはなれないが、イギリスではまったく事情が異なる。行政に登録さえすれば、誰でも胴元になれるのだ。(ここでは「胴元」を、賭けを企画・運用する事業者等とする。)

■ブックメーカーはいくら損したのか?
胴元であるブックメーカーが負けた金額については1500万ポンド程度とする報道も多いが、全国紙INDEPENDENT(web版)の5月4日付記事は、胴元の払戻総額が2500万ポンド(約39億円)に達するだろうと伝えている。一方、AFP BB NEWS(5月1日付)によれば、大手ブックメーカーWilliam Hill は自身のレスター優勝による払戻見込額を300万ポンドとし、その場合の損失を220万ポンド程度と見込んでいる。これを平均的な水準だと考えると、総額2500万ポンドの払戻しによる業界全体の損失額はおよそ1800万ポンド(約28億円)だ。

世界一メジャーなスポーツの1シーズン通した賭けで28億円というとそれほど大きくない印象もあるが、見方を変えれば、これは数多くある賭けの企画のうちたった一つの賭けによる損失である。一つの賭けで胴元側に一方的にこれだけの損失が発生するというのは、おそらく他に例がない大事件だ。

■5001倍は美味しかったのか?
胴元が絶対に負けることのない日本の公営ギャンブル等で採用されるパリミュチュエル方式とは異なり、イギリスで広く採用されるブックメーキング方式では、胴元は常にリスクをとっている。だが、他チームへの賭け分も含めた売上総額の4倍近い払戻しが発生する状況は、さすがに誰にも想像できなかったはずだ。(パリミュチュエル方式では、賭け金の総額から胴元の取り分を差し引いた上で、残りを的中者に分配する。トータリゼータ方式とも呼ばれる。)

通常、ブックメーキング方式の胴元は、一つの企画ごとに収支が一定レベルになるよう賭け目ごとのオッズ(賭けの倍率)を設定する。英BBCが紹介した、開幕直後の途中清算によって購入額50ペンスに対し45ペンスの払戻しを受けた例から、胴元が期待する賭けの収益は売上の一割程度と考えるべきだろう。想定される優勝確率に期待収益分の調整を加え、各賭け目のオッズを適当なレベルに設定した結果、賭け金が適当に分散されれば、胴元として上手くリスクを管理できたことになる。

レスター優勝で胴元が大損したのは、端的に言えば、このリスク管理が上手くできなかったせいだ。だが、それは、開幕前に設定された5001倍というオッズが大きすぎた(=美味しすぎた)からではない。昨シーズン成績(11勝19敗8分)の「勝ち」「引き分け」「負け」の確率を前提に考えれば、5001倍は賭ける側にとっては実は“不味い”オッズなのだ。

過去のプレミア・リーグ優勝チームの中で獲得勝ち点が最も低かったのは、1997年に優勝したマンチェスター・ユナイテッドの75点なのだが、昨シーズンのレスターが38試合で勝ち点75点以上を得る確率は、数万回に1回程度にしかならない。(筆者によるシミュレーションでは、27,594回の試行で1回発生。)

では、リーグ開幕前の5001倍という“不味い”オッズではまったく売れなかったかと言うと、そんなことはないだろう。競馬等を対象とした行動経済学の研究では、オッズの大きい大穴馬券は期待値以上によく売れることが知られており、大穴バイアスと呼ばれている。“不味い”わりには良く売れたのではないだろうか。

だが、大穴バイアスやレスター・ファンの応援だけで胴元であるブックメーカーが大損したと考えるのは早計だろう。

■胴元が大損した本当の理由
優勝チーム予想のオッズは、開幕後対戦が消化されるにつれ調整される。通常、想定より成績が良ければ、オッズは徐々に縮小する。しかし、今期のレスター・シティの場合はそうではなかったらしい。

AFP BB NEWS記事等によれば、開幕前に5001倍だったオッズは、引き分けたボーンマス戦(8月29日)後に一旦2501倍と縮小した後、勝ったノーリッジ戦(10月3日)後に再度5001倍に戻っている。(図はオッズの推移を逐一示すものではない。)

実は、8試合経過後に提示されたこの5001倍は、“美味しい”オッズなのだ。ブックメーカーによるミスプライシング(誤った価格設定)である。

8試合経過した時点では、昨年の成績に8試合目までの成績を加味した「勝ち」「引き分け」「負け」の確率を前提に優勝確率を考える人なら、4600倍程度よりも大きければ十分“美味しい”オッズだ。だが、過去の戦績から確率で考える人の中には、最近の成績をより重要視する人も少なくない。仮に、今期の一試合ごとのウェイトを二倍にして上と同様のシミュレーションをすると、860倍程度がこの時点での妥当なオッズになる。これらの人たちにとっては、大きなアービトラージ(裁定取引)のチャンスである。

真に妥当なオッズは誰にも知りようがないが、8試合経過した時点の5001倍を多くの人が“美味しい”オッズと評価したのは間違いない。そして、胴元にとって誤算だったのは、その“美味しい”レスター優勝オッズが想定をはるかに超えて売れたことで、他チームが優勝する賭け目の売上とのバランスが大きく崩れてしまったことだろう。リスク管理の失敗だ。

その後の5試合でレスター・シティが4勝1分の好成績を上げたため、オッズを急速に縮小させたものの、時すでに遅し。この時点で、既に大きな評価損を認識していたのではないだろうか。

レスター・シティの優勝でイギリスの賭けの胴元が大損したのは、単に運が悪かったせいではなかったのだ。

【参考記事】
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■【日米比較】お金持ちは本当にケチなのか?

日本が先進国で最下級だという「幸福度」ランクについて、みんなが勘違いしていること。


国連「持続可能な開発ソリューションズ・ネットワーク(Sustainable Development Solutions Network)」は今月16日、『世界幸福度レポート2016年版(World Happiness Report 2016)』を発表しました。

3/17付CNN.co.jp記事『国連の幸福度報告書、トップはデンマーク 日本53位』では、以下のように報じています。

幸福度が高い国としてはデンマークが1位で、昨年トップだったスイスは2位に下がった。
4年前から発表されている同報告書で、デンマークがトップに立つのは3回目。16年版の3位以下にはアイスランド、ノルウェー、フィンランドが続いている。
6~10位はカナダ、オランダ、ニュージーランド、オーストラリア、スウェーデンだった。
経済大国の中では米国が13位、ドイツが16位に入ったが、英国は23位にとどまり、日本は53位、ロシアは56位、中国は83位と振るわなかった。

日本人の幸福度が他の国の人たちと比べて低くなりがちだというのは、これまでも様々な調査で指摘されてきた点です。このニュースもいくつかのメディアで報じられましたが、調査内容を良く把握せずに調査結果だけを大きく取り上げてしまった例も見受けられました。これは、あまり褒められたことではないでしょう。

■幸福度って何?
国連版「幸福度」調査の内容については、例えば、3/18付WIRED.jp記事『デンマーク「世界で最も幸福な国」に:国連の幸福度ランキング』で、

2016年版の「世界幸福度ランキング」が発表された。報告者によると、総合的な幸福度には、経済的状況のほか、「幸福度の平等さ」や「社会的支援」などが反映されているという。

と説明されているように、「経済状況」、「幸福度の平等さ」、「社会的支援」等の複数のパラメーターから算出されていると思っている人は、少なくないのではないでしょうか?

しかし、実はそうした理解は、まったくの勘違いと言ってよいでしょう。

国連版「幸福度」は、「キャントリルの梯子の質問(the Cantril ladder question)」によって回答者の「主観的幸福度(subjective happiness)」を測定し、国ごとにその平均を算出したものです。また、「キャントリルの梯子の質問」は、「ありうる最悪の人生」を梯子の0段目、「ありうる最高の人生」を梯子の10段目としたときに、「現在」自分が何段目にいるのかを回答してもらうための質問なのです。

国連版「幸福度」が複数のパラメーターから算出されているものと勘違いしてしまう人が多いのは、報告書の中で、(1)経済水準(一人当たりGDP)、(2)社会的支援、(3)健康寿命、(4)人生選択の自由、(5)寛容さ、(6)腐敗認知度の6つのパラメーターを説明変数として回帰分析を行っているためでしょう。

6つのパラメーターから「幸福度」を算出したのではなく、アンケート結果から各国の「幸福度」を算出した上で、6つのパラメーターを説明変数として用いた数式によって、その「幸福度」をどうにか推計しようとしたわけです。

また、報告書では、「キャントリルの梯子の質問」に対する回答の標準偏差を「幸福度の平等さ」と定義し、比較しています。標準偏差は、データの散らばりを表す統計指標です。

■幸福度と推計値の違い
下図は、アンケート調査の結果である「幸福度」と、「幸福度」のデータを回帰分析することで得られた6つのパラメーターによる推計値を比較したものです。斜め線の上側に位置する国は推計値よりも実際の値が低く出ている国で、逆に下側に位置する国は推計値よりも実際の幸福度が高く出ている国になります。

乖離幅が大きければ大きいほど、回帰分析で得られた6つのパラメーターによる数式では説明しきれない「要因」が大きいことを意味しています。中国本土への同化が不安の香港や深刻な紛争が進行中のシリア等は、分かりやすい例と言えるでしょう。

日本は、アンケート結果から得られた「幸福度」が推計値よりも低く出ているグループの一員ですので、「幸福度」では全体の53位と低迷しましたが、推計値で比較すると23位になります。これは、「経済水準(一人当たりGDP)」だけで比較した場合の26位よりも良い結果です。全体の3位と健闘した「健康寿命」によるところも大きいのでしょう。「寛容さ」は137位と残念な結果となりましたが、他のパラメーターと比べて寄与度は低かったと考えられます。

<<パラメーター別順位>>
幸福度       53位
推計値       23位
(1) 経済水準      26位
(2) 社会的支援     23位
(3) 健康寿命      3位
(4) 人生選択の自由   45位
(5) 寛容さ       137位
(6) 腐敗認知度     32位

推計値は、紛争中の国等を除けば、グローバルで見た場合の客観的な「幸福度」を表していると言えるのですが、日本人は客観的な「幸福度」のわりに主観的な「幸福度」を低く回答するという傾向があります。これは、要因の一つとしてですが、日本人が悲観的すぎて、本当は身近にある当たり前の幸せを感じ難くなっている可能性が挙げられます。

しかし、おそらくそれ以上に日本人の「幸福度」を押し下げている要因は、以前『国際世論調査で際立つ、日本らしさ』と題した記事で書かせていただいたように、日本人の「はっきりした意見を言えない(言わない)」気風ではないでしょうか。

「わからない度」と「決められない度」で総合一位の日本は、「まぁまぁ」くらいの回答が断然多くなることから、アンケート調査結果として記録される表向きの「幸福度」は、どうしても実態よりも低くなってしまうのだろうと思うのです。

以下の記事もぜひ参考にしてください。

<<参考記事>>
■国際世論調査で際立つ、日本らしさ。
■映画『マネー・ショート』を見ていて混乱するのは、「空売り」を予習したせいだ。
■日本がギリシャより労働生産性が低いのは、当たり前。
■軽減税率で一番損なのは誰か、分かりやすく解説してみました。
■【日米比較】お金持ちは本当にケチなのか?